「急な転勤が決まったけれど、買ったばかりの持ち家はどうすればいいの?」「賃貸サイトで『リロケーション物件』という言葉を見たけれど、普通の賃貸と何が違うの?」と疑問に思っていませんか?
不動産業界で使われる「リロケーション」という言葉は、少し特殊です。「家を貸したい持ち家オーナー」と「部屋を借りたい入居者」の両方の視点で使われるため、意味を正しく理解しておかないと思わぬトラブルに繋がることがあります。
この記事では、不動産のプロ視点で以下のポイントを解説します。
- リロケーションの正しい意味と利用されるケース
- 「リロケーション物件」と普通の賃貸の決定的な違い
- 持ち家を貸す側・物件を借りる側、それぞれの注意点
この記事を読めば、転勤や海外赴任に伴う「住まいの悩み」をスッキリと整理し、後悔のない選択ができるようになります。
リロケーションとは?まず意味をわかりやすく解説
不動産用語としての「リロケーション」は、状況や立場によって意味合いが少し異なります。まずは基本的な意味を整理しましょう。
リロケーションは転勤・海外赴任に伴う住まいの移動や管理を指す言葉
元々の英語の「relocation」には、「移転」「配置転換」といった意味があります。
そこから派生し、日本の不動産業界においては、転勤や海外赴任に伴い自宅を一時的に賃貸へ出したり、住まいの管理や転居をサポートしたりするサービス全般を指します。
持ち家を一時的に貸す意味で使われることが多い
個人のお客様にとって最も一般的な意味合いは、「転勤などの期間中だけ、一時的に持ち家を他人に賃貸として貸し出すこと」です。
「家を売却せずに、赴任から戻ってくるまでの間だけ有効活用するシステム」=リロケーションサービス、と認識しておけば間違いありません。
企業の転勤者向け住まいサポートを指す場合もある
法人(企業の人事・総務部)の視点では、リロケーション=「社員の転勤に伴う引越しや社宅手配の代行サービス」を指すことがあります。
社宅規定のすり合わせから物件探し、引越し業者の手配までを一括して請け負う専門会社を「リロケーション会社」と呼びます。
※このようなサービスは、リロケーションを専門とする会社だけでなく、賃貸管理会社や不動産会社が提供している場合もあります。依頼先によって対応範囲が異なるため、サービス内容を事前に確認しておくと安心です。
賃貸ではリロケーション物件として募集されることもある
部屋を「借りる側」の視点では、賃貸情報サイトなどで「リロケーション物件」という名称を目にすることがあります。
これは「大家さんが事業として建てた賃貸マンション」ではなく、「一般の個人オーナーが、転勤で留守にする間だけ貸し出している分譲住宅(戸建て・マンション)」を意味します。
リロケーションが利用される主なケース
ここからは、どのような場面でリロケーション(持ち家の貸し出しや管理代行)が利用されるのか、代表的なケースをご紹介します。
転勤で一時的に自宅を空ける場合
「念願のマイホームを購入した直後に、地方への転勤辞令が出た」というケースです。
数年後には元の勤務地に戻れる見込みが高いため、家を手放さず、留守の間だけ人に貸して家賃収入を得るために利用されます。
海外赴任中に持ち家を貸したい場合
海外赴任は数年単位の長期になることが多く、その間ずっと空き家にしておくと家が傷んでしまいます。
また、固定資産税や維持費もかかり続けるため、海外赴任期間中の有効活用としてリロケーションを選択する人が非常に多いです。
家を売らずに一定期間だけ賃貸に出したい場合
転勤以外にも、「親の介護で数年間だけ実家に戻る」「少しの間だけ別のエリアに住んでみたい」といった理由で、自宅を手放さずに一定期間だけ賃貸に出すケースでも、リロケーションの仕組みが使われます。
会社が転勤者の住まい探しをサポートする場合
こちらは法人向けのケースです。
社員が転勤する際、企業側がリロケーション会社と提携し、赴任先での物件探しや法人契約の手続き、引越しの手配などをスムーズに行えるようサポートする目的で利用されます。
帰国後の住まい探しが必要になる場合
海外赴任を終えて日本へ帰国する際、「貸し出していた自宅の契約満了までまだ時間がかかる」あるいは「持ち家がない」という場合、帰国後の仮住まいや新たな賃貸探しをリロケーション会社にサポートしてもらうケースです。
リロケーション物件とは?普通の賃貸との違い

もしあなたが「賃貸物件を借りる側」だとしたら、リロケーション物件は普通の賃貸と何が違うのでしょうか。決定的な違いを解説します。
貸主が一時的に自宅を貸し出している物件
前述の通り、リロケーション物件の大家さんは「一時的に家を空けている個人」です。
そのため、物件自体はグレードの高い分譲マンションや、設備の充実した一戸建てであることが多く、質の高い住環境を得られやすいという特徴があります。
定期借家契約になっていることが多い
ここが最大の違いです。
通常の賃貸は、借主が希望すれば何度でも更新できる「普通借家契約」が多い一方で、リロケーション物件は、オーナーが将来戻って住むことを前提としているため、『定期賃貸借契約(定期借家契約)』で募集されるケースが一般的となっています。
定期借家についてより詳しく解説しています
契約期間が決まっている場合がある
オーナーは「自分が赴任から戻るまで」しか家を貸せません。そのため、「契約期間は3年間」「令和〇年〇月まで」と、初めから入居できる期間が厳密に定められています。
更新できない・再契約できないケースがある
定期借家契約の場合、契約期間が満了すると必ず退去しなければならないケースが大半です。
オーナーの赴任期間が延びた場合のみ「再契約」できることもありますが、基本的には「期間が来たら更新はできず、絶対に出ていかなければならない物件」だと認識しておく必要があります。
設備や家具の扱いに注意が必要
オーナーが使用していたエアコンや照明、場合によっては一部の家具がそのまま残されている(残置物)ことがあります。
これらが故障した場合、「貸主負担で直すのか、借主負担で直すのか、あるいは撤去していいのか」など、普通の賃貸よりも設備の扱いの取り決めが複雑になる傾向があります。
リロケーションのメリット
持ち家を貸す側、そしてリロケーション物件を借りる側、双方のメリットを整理します。
空き家期間中に家賃収入を得られる
【貸す側のメリット】
誰も住んでいない家でも、住宅ローンや固定資産税、マンションの管理費・修繕積立金は毎月かかります。リロケーションで家を貸し出せば、その家賃収入をこれらの支払いに充てることができ、家計の負担を大幅に軽減できます。
家を売らずに維持できる
【貸す側のメリット】
空き家の状態が長期間続くと、換気不足や通水不足により建物や設備が傷みやすくなります。人に住んでもらうことで建物の劣化防止につながり、将来戻ってきた時にもスムーズに生活を再開できます。
管理会社に任せられる場合がある
【貸す側のメリット】
管理会社に依頼すれば、入居者募集や家賃管理、入居中の問い合わせ対応など、多くの管理業務を任せられます。遠方や海外にいても、煩わしい管理対応に悩まされることはありません。
<管理会社に委任できる主な内容>
- 入居者募集・内見対応
- 契約・解約手続きのサポート
- 賃料の集金や管理
- 入居者からのトラブルやクレームなどの相談対応
- 設備不具合に関する対応
借りる側は条件が合えば良い物件に住めることがある
【借りる側のメリット】
リロケーション物件は「期間が決まっている」というデメリットがある分、契約期間が限定されることから、周辺相場より家賃が抑えられているケースがあります。期間の条件さえ合えば、憧れの高級分譲マンションや広い一戸建てに割安で住むことができます。
転勤・海外赴任中の住まい問題を整理しやすい
【双方のメリット】
貸す側にとっては「家をどうするか」という最大の悩みが解決し、借りる側(特に期間限定で住みたい人)にとってもニーズが合致するため、転勤や赴任というライフイベントにおける住まい問題を合理的に解決できる仕組みです。
リロケーションのデメリット・注意点
メリットばかりではありません。失敗しないために、以下のデメリットやリスクを必ず把握しておきましょう。
契約期間や退去時期に制限がある
【借りる側のメリットの裏返し】
契約期間満了時には引越しを余儀なくされるため、「子どもが学校を卒業するまで同じ家に住みたい」といった長期的な定住を望む人には全く不向きです。
借主が決まらないリスクがある
【貸す側のデメリット】
「期間が限定されている賃貸」は、普通の賃貸よりも借り手が見つかりにくいのが現実です。家賃設定が高すぎたり、貸し出し期間が短すぎたり(例:1年だけ等)すると、空室のまま赴任期間が終わってしまうリスクがあります。
設備故障や原状回復トラブルが起きる可能性がある
【貸す側・借りる側共通のデメリット】
貸主の思い入れのある「マイホーム」であるため、退去時の原状回復(傷や汚れの修繕)の基準を巡って、貸主と借主の間でトラブルになるケースが少なくありません。
住宅ローンや管理規約の確認が必要
【貸す側のデメリット】
住宅ローンは原則として「自分が住むための家」に適用される低金利のローンです。勝手に他人に貸し出すと契約違反になる恐れがあるため、事前に金融機関の許可を得る必要があります。また、分譲マンションの場合は、管理規約で「賃貸に出す際のルール」が定められているか確認が必要です。
借りる側は長期入居しにくい場合がある
【借りる側のデメリット】
前述の通り、定期借家契約が基本となるため、どれだけその家を気に入っても、貸主が戻ってくるタイミングで必ず明け渡さなければなりません。引越しの手間や初期費用が再度発生することも考慮しておく必要があります。
転勤・海外赴任でリロケーションを検討するときの確認ポイント

持ち家がある状態で転勤辞令が出た場合、リロケーション(自宅を貸す)を進める前に確認すべき5つのポイントです。
自宅を貸すのか、転勤先で借りるのかを整理する
まずは「自宅を貸し出すこと」と「自分が赴任先で住む家を探すこと」、2つのタスクを並行して進める必要があります。
家族全員で引越すのか、単身赴任で家族は持ち家に残るのか、方針を家族でしっかりと話し合いましょう。
赴任期間・帰任時期の見込みを確認する
「大体何年くらいで戻ってこられそうか」という見込みを会社に確認します。
3年以上の長期赴任であればリロケーションで貸し出すメリットが大きいですが、1年程度の短期であれば、入居者探しや契約手続きの手間を考えると「空き家のまま維持(空き家管理サービスを利用)する」方が合理的な場合もあります。
会社の社宅制度・家賃補助・法人契約を確認する
赴任先での自分の住まいについて、会社の制度を確認します。
「家賃補助はいくら出るか」「会社名義での法人契約になるのか」「引越し費用はどこまで負担してもらえるか」を事前に把握しておかないと、物件選びに失敗してしまいます。
住宅ローン中の家を貸せるか確認する
非常に重要なポイントです。 住宅ローンを借りている金融機関に「転勤のため、一時的に家を賃貸に出したい」と必ず相談してください。
やむを得ない転勤などであれば住宅ローンのまま貸し出しが認められる場合もありますが、金融機関によって対応が異なるため、必ず事前に相談しましょう。無断で貸し出すと一括返済を求められるリスクがあります。
また、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている場合は、転勤中の貸し出しによって適用条件が変わることがあります。税務上の取り扱いについても、事前に税理士や税務署などへ確認しておくと安心です。
あわせて、火災保険や地震保険についても、居住用から賃貸用へ契約内容の見直しが必要になる場合があります。保険会社にも事前に相談しておきましょう。
管理会社やリロケーション会社の対応範囲を確認する
自宅の貸し出しを依頼する会社選びです。
「入居者の募集だけ」を行う会社なのか、「家賃保証(サブリース)」をしてくれるのか、「赴任中の修繕手配まで丸ごと対応」してくれるのか、サービス内容と手数料のバランスをしっかりと比較検討しましょう。
リロケーション物件を借りるときの注意点

もしあなたが転勤族などで、赴任先での物件選びの際に「リロケーション物件(期間限定の貸し出し物件)」を借りようとしている場合の注意点です。
定期借家契約か普通借家契約か確認する
募集図面やポータルサイトの備考欄を必ず確認し、「定期借家契約」なのか「普通借家契約」なのかをチェックします。リロケーション物件の大半は定期借家契約です。
※募集図面や物件情報だけで判断せず、契約前には重要事項説明書でも契約形態や契約期間、再契約の可否を確認しておくと安心です。
契約満了後に住み続けられるか確認する
定期借家契約の場合、「契約期間」と「再契約の可否」を確認します。
「2年契約(再契約不可)」とあれば、2年後には絶対に出ていかなければなりません。「再契約相談可」となっている場合でも、貸主の事情次第で退去を求められる可能性があることは理解しておきましょう。
設備・家具・残置物の扱いを確認する
最初からついているエアコンやコンロが「設備(貸主の負担で修理するもの)」なのか、「残置物(前入居者=オーナーが残していったもので、修理は借主の自己負担になるもの)」なのかを、契約書や重要事項説明書で必ず確認してください。
退去時の原状回復範囲を確認する
分譲仕様のグレードの高い設備が多いため、傷をつけた場合の修繕費用が高額になることがあります。
入居時に、すでにあった傷や汚れを写真に撮って管理会社に報告しておくなど、退去時のトラブルを防ぐ自衛策が必要です。
短期利用なのか長期入居なのかを整理する
「自分自身も数年で転勤になるから、期間が決まっていても問題ない」という方であれば、リロケーション物件は非常にコスパの良い選択です。
自身の滞在予定と物件の契約期間がマッチしているかをよく整理しましょう。
転勤・帰国後の部屋探しで困ったときの進め方
転勤先での部屋探しや、海外赴任から帰国して新たな住まいを探す際は、通常の引越しとは異なるアプローチが必要です。
勤務先・通勤時間からエリアを決める
土地勘のない場所での部屋探しは、まず「勤務先(オフィス)」を起点にします。
満員電車の混雑度や乗り換えのしやすさを考慮し、ドア・ツー・ドアで通勤にストレスのないエリアを不動産会社に提案してもらいましょう。
入居希望日と引越し期限を整理する
着任日(赴任日)から逆算し、「いつまでに鍵を受け取る必要があるか」というタイムリミットを明確に定めます。
この期限がブレると、審査や契約のスケジュールが組めなくなります。
オンライン内見や来店不要契約を活用する
遠方や海外からの部屋探しの場合は、現地に足を運ぶのが困難です。
不動産会社のスタッフに物件に行ってもらい、スマホのビデオ通話で繋ぐ「オンライン内見」や、契約手続きを郵送やオンラインで行う「IT重説(来店不要契約)」をフル活用しましょう。
海外からの部屋探しやオンライン内見について、以下記事にてより詳しく解説しています
法人契約・個人契約どちらになるか確認する
会社名義で契約する「法人契約」の場合、会社の規定(家賃上限、平米数、築年数など)をクリアした物件しか選べません。
条件に合わない物件に申し込むと審査で弾かれてしまうため、探す前に必ず規定を確認してください。
法人契約と個人契約について、詳しくはこちら
遠方から探す場合は不動産会社に条件を細かく伝える
「現地を見に行けないので、大通りの車の音や、部屋のにおい(カビやタバコなど)があれば必ず教えてください」と、視覚ではわからない情報を不動産会社の担当者に細かくリクエストすることが、失敗を防ぐコツです。
海外赴任からの帰国や遠方からの引越しについては、以下の記事にてより詳しく解説しています
リロケーションに関するよくある質問
リロケーションについて、よく寄せられる疑問にQ&A形式でお答えします。
リロケーションとは簡単にいうと何ですか?
転勤や海外赴任などで一時的に持ち家を離れる際、空き家になる自宅を「一定期間だけ賃貸に出して有効活用すること(またはその管理サービス)」を指します。
リロケーション物件とは何ですか?
転勤などの事情により、個人オーナーが「自分が戻ってくるまでの期間限定」で貸し出している賃貸物件のことです。グレードの高い分譲住宅が多いのが特徴です。
リロケーション物件は普通の賃貸と何が違いますか?
最大の違いは大半が「定期借家契約」であることです。「定期借家契約」では、普通の賃貸(普通借家契約)のように自由に更新し続けることはできず、定められた期間が満了すると退去しなければなりません。
リロケーション物件はやめた方がいいですか?
一概にやめた方がいいわけではありません。「長く定住したい人」には向きませんが、「自分も数年で転勤する予定」「一時的な仮住まいを探している」という人にとっては、相場より安く良質な物件に住めるチャンスでもあります。
転勤で自宅を貸す場合は何から始めればいいですか?
まずは住宅ローンを組んでいる金融機関へ相談し、貸し出しの許可を得てください。その上で、複数のリロケーション会社(不動産管理会社)に見積もりや査定を依頼し、サービス内容を比較検討しましょう。
海外赴任から帰国後の部屋探しはいつから始めるべきですか?
理想は帰国予定日(入居希望日)の1.5〜2ヶ月前です。時差や書類のやり取りに時間がかかることもあるため、帰国日が確定したら早めに不動産会社へコンタクトを取り、オンライン内見等の手配を進めることをおすすめします。
海外からの帰国後の際の部屋探しについては、以下記事にてより詳しく解説しています
まとめ
リロケーションは、持ち家を持つビジネスパーソンにとって、転勤・赴任中の経済的負担を減らし、大切なマイホームを守るための非常に有効な手段です。
- 貸す側: 住宅ローンの確認と、信頼できる管理会社選びが最重要
- 借りる側: 「定期借家契約」であることを理解し、期間や原状回復のルールを必ず確認する
リロケーションは「貸す側」にも「借りる側」にも、それぞれ特有のメリットとデメリットが存在します。本記事で解説した注意点と確認ポイントをしっかりと押さえ、自身のライフプランに合った選択をしてください。