社員の退職や転勤などをきっかけに、会社名義で借りていた物件(借上社宅)に「そのまま社員個人の名義で住み続けたい」というご相談は非常に多く寄せられます。
「書類の名前を書き換えるだけで済むの?」 「また初期費用がかかるの?」 「審査に落ちて追い出されることはある?」など、名義変更の手続きには多くの疑問や不安がつきものです。
本記事では、法人契約から個人契約へ切り替える際の「不動産実務における本当の仕組み」や、具体的な手続きの流れ、費用に関する注意点までを分かりやすく解説します。
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法人契約の賃貸は原則として名義変更できない

「法人契約の賃貸は名義変更できるのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。しかし、実務上は単純な名義変更ではなく、再契約として扱われるケースが一般的です。
そのため、法人契約の賃貸物件を社員個人へ切り替える際は、契約者名を書き換えるだけでは完了せず、新たな契約手続きが必要になることがほとんどです。
なぜなら、賃貸借契約における契約者は、貸主(大家さん・管理会社)が入居審査を行ったうえで契約している当事者だからです。貸主から見れば、「法人」と「個人」では信用力や支払い能力が大きく異なるため、契約者を変更する場合には改めて審査が必要になります。
そのため、実務上は以下の手続きをとるケースが一般的です。
- 現在の「法人契約」を一度解約する
- 入居者本人が個人として入居審査を受ける
- 「個人名義」で新たな賃貸借契約を締結する
なお、管理会社や貸主によっては「契約者変更」や「承継契約」といった手続きで対応する場合もあります。しかし、その場合でも個人審査や新たな契約書の締結、各種費用の負担が必要になることが多く、単純な名義変更として扱われるケースは少数です。
法人契約から個人契約への切り替えは、単なる「名義変更」ではなく、『法人契約の終了と個人契約への再契約』と考えておくことが大切です。審査や初期費用が新たに発生するケースも多いため、会社側・社員側の双方が事前に確認しておきましょう。
法人契約から個人契約へ切り替えるケース
どのような状況で「法人から個人への切り替え(再契約)」が発生するのか、代表的な4つのケースを解説します。
退職
最も多いのが、社員が会社を退職するケースです。 退職日をもって会社としての家賃負担や社宅規定の適用は終了しますが、「今の部屋を気に入っている」「引越し費用をかけたくない」などの理由から、社員本人が家賃を全額負担してでも住み続けたいと希望する場合に手続きが発生します。
転勤終了
単身赴任などの転勤期間が終了し、本来は退去して元の持ち家や実家に戻るはずだったものの、本人の希望でそのまま現地に残り、会社の手を離れて個人で住み続けるケースです。
住宅補助終了
会社の社宅規定で定められた「入居期限(例:入社から5年まで、30歳まで等)」を迎えたケースです。 規定により法人としての契約は終了しますが、本人が引越しを希望しない場合、個人名義に切り替えて住み続ける手続きをとります。
結婚
「単身者専用の借上社宅」として会社が借りていた物件で、社員が結婚する場合です。
会社によっては「結婚した場合は社宅規定の対象外となる」というルールを設けていることがあり、その場合は法人契約を解除し、個人契約へ切り替えて新生活をスタートさせます。
また、「単身社宅」から「家族社宅」へ移行するという企業もあります。
法人契約から個人契約へ変更する流れ

実際に法人から個人へ切り替える(再契約する)際の、基本的な4つのステップを解説します。
管理会社へ相談
まずは、現在の物件を管理している管理会社(または大家さん)に対し、会社側あるいは社員本人から「法人を解約し、現在の入居者個人の名義で再契約したい」旨を相談します。
※物件やオーナーの方針によっては、「再契約不可(必ず退去しなければならない)」と言われるケースもあります。
入居審査
再契約が可能な場合、個人としての入居審査がスタートします。 社員の「現在の年収」や「個人の信用情報」「勤務先(転職する場合は転職先の情報)」を基に、家賃の支払い能力があるかを管理会社や家賃保証会社が審査します。
再契約(初期費用の支払い)
審査に無事通過したら、新しい個人契約のための初期費用を支払います。 再契約にかかる費用の相場や内訳は管理会社によって大きく異なりますが、新たな敷金や保証会社の初回保証料、火災保険料などが発生するケースが一般的です。
契約締結
個人名義の新しい賃貸借契約書に署名・捺印を行います。法人契約の解約日が「〇月31日」であれば、個人契約の開始日は「翌月1日」となるようにスケジュールを調整し、切り替えが完了します。
法人契約の名義変更で注意すること
切り替え(再契約)を進める上で、特にトラブルになりやすい4つの注意点を解説します。
審査落ちすることがある
法人契約の時は「会社の業績や信用力」で審査を通過していましたが、今回は「個人の年収」で審査されます。
例えば、会社の家賃補助(会社負担)がなくなることで、家賃が本人の手取り月収の1/3を大きく超えてしまう場合や、過去にクレジットカードの滞納履歴などがある場合、審査に落ちて住み続けられなくなるリスクがあります。
入居審査落ちの確率・落ちやすい人の傾向、通過するための対策を詳しく解説
初期費用が再度かかることがある
「同じ部屋に住み続けるのだから費用はかからない」というのは誤解です。
新規の再契約となるため、敷金や火災保険料のほか、管理会社によっては「名義変更事務手数料(家賃の0.5〜1ヶ月分など)」や「仲介手数料」を新たに請求されるケースが多くあります。事前に費用の内訳をしっかり確認することが重要です。
一人暮らしにかかる初期費用の内訳や無駄な費用の削り方までを解説
家賃条件が変わることがある
再契約のタイミングで、大家さんから「周辺の家賃相場が上がっているから、新しい個人契約からは家賃を5,000円値上げしたい」と条件変更を提示されることがあります。法人契約時の家賃がそのまま引き継がれるとは限りません。
退去扱いになることもある
管理会社の厳格な規定により、法人契約の終了時は一度『退去扱い』として原状回復や精算手続きを求められるケースがあります。
この場合、社員が住み続けるとしても、法人が一度原状回復費用を精算しなければならないため、社内での費用負担の調整が必要になります。
法人契約から個人契約へ切り替える際によくあるトラブル
法人から個人へ契約を切り替えるプロセスでは、法人契約と個人契約の「仕組みの違い」を正しく理解していないことによるトラブルが頻発します。代表的な3つの事例を解説します。
退職後も住み続けられると思っていた
社員が「法人契約と個人契約の違い」を正確に理解しておらず、「家賃さえ自分で全額払うようにすれば、退職後も今の部屋にそのまま住める」と思い込んでいるトラブルです。
法人契約はあくまで「会社」が貸借人となっているため、退職時には会社の社宅規定に従って原則「退去」しなければならないケースが多くあります。再契約(個人への切り替え)を希望しても、管理会社の入居審査に落ちてしまったり、そもそも貸主側が再契約を認めていなかったりすることがあるため、事前に退去時のルールや再契約の可否をしっかりと確認しておくことが必須です。
同棲が会社に発覚した
単身用の社宅として住んでいた物件で、入居者追加のルールを確認せずに無断で同棲を始め、後から会社や管理会社に発覚してペナルティを受けるケースです。 賃貸契約において、事前の許可なく同居人を増やすことは重大な契約違反となります。
結婚や同棲を機に個人契約へ切り替える、あるいは社宅のまま同居人を増やす場合は、まず自社の社宅規定で同居が認められているかを確認し、必ず事前に管理会社へ「同居人追加の申請手続き」を行わなければなりません。
連帯保証人を求められた
個人契約へ切り替える(再契約する)際、「元々法人の社宅として何年も住んで実績があるのだから、個人の審査でも連帯保証人は不要だろう」と思い込んでいて、手続きがストップするトラブルです。
法人から個人へ切り替える以上、改めて「個人の現在の支払い能力」で審査が行われます。そのため、親族などの連帯保証人を求められたり、家賃保証会社の利用が必須となったりするのが一般的です。
保証会社を利用する場合は初回保証料などのコストも発生するため、どのような保証条件が適用されるのかを再契約前に確認しておく必要があります。
連帯保証人の条件や、頼める人がいない場合の対処法について解説
法人契約・借上社宅の契約変更で困ったら不動産会社へ相談を
法人契約から個人契約への切り替え(名義変更・再契約)は、単なる手続きにとどまらず、会社の規定、退職者の支払い能力、そして管理会社の方針という3つの要素が複雑に絡み合います。
「退職する社員から名義変更したいと言われたが、どう対応すればいいか分からない」 「初期費用や敷金の精算について、管理会社と交渉してほしい」 「社宅規定を見直して、今後のトラブルを減らしたい」
このようなお悩みがある企業の総務・人事担当者様は、法人契約の実務に強い不動産会社へ相談するのが最も確実で安全な方法です。
ホンネ不動産法人部では、法人契約・借上社宅・社宅制度導入の専門的なサポートを行っています。
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